……ルーク……どこ…い……?……さが…て……
誰かに呼ばれたような気がして目が覚めたが、頭の痛みに額に手を当てて目を閉じたまま頭痛が去るのを待つ。
時たま起きる強烈なほどの頭痛とは違って今回のものはそれほど酷いものではないので楽だが、今のように僅かな頭痛と共に呼ばれたような気がする時は心にしこりのようなものが残る。
自分を呼んだ誰かを探してやらないといけないような気がするからだ。
この部屋の鍵がかかった頑丈な扉や鉄格子がはまった狭い窓から逃げ出すことなど出来ないと理解しているのに・……
元の名と居場所をレプリカに奪われ、灰という名を与えられた俺をかつての名のままに呼ぶ誰か。その誰かは自分を探している。
『ルーク』はあの陽だまりに居るはずなのに誰かはずっと、俺がレプリカに居場所を奪われたと自覚した頃から俺を呼んでいる。
ルークという名もあの場所も、もう俺のモノではないと知っているのに。その誰かに会いたい。誰かはレプリカではなく俺を、俺自身を呼んでいる。
「俺は此処に……」
目を開けて額に当てていた手を狭く四角い窓のほうへと伸ばす。
仕切られた空は眼に痛いほどに澄んでいて、視界がぼやける。
誰かに応えたくても俺の声は伝わらない。手を伸ばしても俺の手は何も掴まない。
なぁ、お前の声に応えられたのなら救われるのか?
呼びかける名すら知らない誰かに問う。答えはないままに俺の中の焔が燃え尽きていこうとしている。
あの男が望んだように俺は灰と成るのか? その前に俺をお前が見つけてくれないだろうかとそう願うのは愚かなのか?
俺はもう一度目を閉じる。もう一度、誰かが呼んでくれることを期待して…――
おーい。おーい。ルーク、どこにいるの?ねーがさがしてるよ?ルウもさがしてるよ?ルーク、どこにいるの?