君護り

おちゆくもののゆくすえねがう


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私とルウが屋敷で暮すようになって一年が経った。
(ねー、きょうはかぜつよいね)
ルウが話す言葉もだいぶ滑らかになり、変に難しい言葉も話すことがある。
これは私の勉強の所為だとガイに叱られてしまうのが近頃の私の疑問だ。
勉強のし過ぎで怒られるって意味がわからない。
「そうだね。陽射しも強いから洗濯物はよく渇きそうだけど」
(アンが喜ぶね)
メイドのアンはルーク誘拐事件後に奉公をはじめた子でルウのお気に入りだ。
九人兄弟の上から3番目の長女という彼女は子ども相手が上手い。
10歳児の大きさで丸っきり赤ん坊だとしたら彼女の手に余るかもしれないが
精神的に4,5歳程度ならば面倒を見ることが出来るようで彼女はルウ専属の世話係だ。
アンは私のことを苦手としているように思うので私は彼女とあまり喋らない。
逆に屋敷の中には私ばかりが表に出てルウがあまり喋らない人などもいる。
それはルウの個性というものなのだろうと思う。
私とルウは双子よりも近くそして遠い存在だからこそ感じ方が違うのだ。
「ルウはアンが好きなんだね」
(うん、すき。あとね。ははうえもねーもガイもすき)
ふわふわと温かなもので心が満たされる。
私の中の穴がその瞬間だけ満たされるような気がした。
(ありがとうルウ。私も大好き)
嬉しそうに笑うルウを感じる。そして、そんな時に私は紅の色を思い出す。
陽だまりを奪われたのだと暗い方向へと歩いていく子ども。
その子どもの手を引くのは子どもが最も信頼していた男だ。
いつかこの場所で出会う男はルウもまた手駒としようとするのだろう。
(ねー?)
(ルウ、空が遠いね)
空に手を伸ばす。
この真綿のような檻の中で私とルウは守られている。
だけど、いつか。
(そとに)
「えっ」
自分の思考とルウの言葉が混ざる。
(いくんだよね)
(……うん、いつか必ず)
この檻から出てあの子を迎えに行こう。でも、まだ手を伸ばしてもこの手は届かない。
(君に会いに行くよ)
だから今は空の青さをただ目に焼き付ける。空を翼でいつか飛ぶ日のために…――

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