君護り
いってらっしゃい、あなたまで
この世界が美しいと思えるのはルウが居るからだ。私の瞳はこの世界を見ない。
『ゲーム』というフィルターがかかった私の瞳はこの世界を見れない。
そして、もし私自身がこの世界を見たら……
「ガイはこの世界が好きですか?」
ルウは眠っている。だから私は近くに居るガイに話しかけた。
彼と私が話す時はルウが眠っている時に限られる。
「ルウ様ではないですよね?いきなり何ですかルーク様」
唐突に何かを言い出すのは確かにルウの方が多い。
その為にルウかと一瞬思ったらしいガイだけれど私の態度から違うとわかったようだ。
「私がこの世界のことなんてどうでもいいって言ったらどうします?」
「立派な王となられるように努力をされているのに?」
その胡散臭そうにこちらを見るのは止めてほしい。
努力家であることは君にとって苛立ちの原因なのか。
ガイラルディア・ガラン・ガルディオス、通称3G君。
「あぁ、それはルウの為。ルウが知りたい時に教えてあげないといけませんし」
自分の為にこれだけの努力をした記憶は正直ない。
努力しないと死ぬからって言われてもしたかどうかはわからない。
ナイフとか拳銃を突き付けられてたらしたと思うけど、頭には入らなかっただろう。
「……ルーク様、その言葉は他の誰にも言わないほうがいいですよ」
世話役になって一ヶ月、彼は私に馴れてきたらしい。
他に人が居ない時の私と居る時の私の態度というか許容範囲を理解してきたみたいだしね。
「そうだね。きっとルウが大変な思いをする」
この様子だと本編に万が一巻き込まれても大丈夫そうだ。
巻き込まれる気はあまりないけど。
「ルーク様」
「何ですか」
「貴方は世界が嫌いなんですか?」
ガイの成長に感動していた私にガイが困惑顔で聞いてきた。
「好きだよ。ルウが好きだから」
なので正直に答えてあげたというのにガイの表情が歪んだ。
「……それではルウ様がいなければ貴方はどうしたんですか?」
「……知りたい?」
ルウではない私の感情を聞くガイに私は即答せずに聞き返す。
「えっ」
「どうしても知りたいのなら教えるけれど後悔するかもしれませんよ?」
「……」
後悔するという言葉に押し黙るガイ。
知りたいと思うほどに私を気にかけてはいないのだろう。
ルウが言ったとしたら深く何も考えずに君は聞くだろうね。
今のところルウがこんなことを言うはずはないけれど。
(ねー、どうしたの?)
ルウのことを考えたのがわかったのか彼が起きたのがわかった。
「ふふ、お寝坊さん。ガイとお喋りしていたんですよ」
(おねぼうちがう。ねーたちがはやいの)
私の言葉に少し怒ったルウは可愛らしい。
そう思っているとルウが身体の主導権を得た。
「おはよう。ガイ」
とびきりの笑顔を向けられるガイ。
今は私も同じ顔だろうにその表情は丸っきり違うだろう。
私が見れない表情を見れたガイが羨ましい。
「おはようございます。ルウ様」
先程までの空気が消えたことでガイが安堵しているのがわかる。
彼は私がルウの前であのような話を再開させないことを知っているのだ。
「むっ、るうさまちがう。るうっ!」
他人行儀なガイの様子にルウが抗議の声をあげる。
ルウとしてはガイが友達のように接してくれることが望みなのだ。
こちらに向けられるガイの眼差しに私はルウよりすこし身体の主導権を借りて頷く。
「ガイ、ルウと遊んであげてください。私はしばらく表に出ませんから」
これがルウとガイが遊ぶ時の目安だ。勉学の時間でなければガイとルウを遊ばせる。
その時にガイがルウに兄のように友達のように接しても私は何も言わない。
私はそうガイに述べているし、ガイも私はその言葉どおりにするとこれまでの経験で知っている。
ガイがルウの相手をしている間に私は考える。ルウを救える手を。
ただの凡人でしかない私にはそれでも足りない。
ルウを助けたいのだと渇望しても何もかもが足りない。
だから知識を求める。少しでも希望を見つけたくて知識を仕入れる。
ルウはそれをつまらないと思っているようだけれど私の感情が伝わっているのかあまり文句はない。
長時間になりすぎると文句が出るがそれは休憩時間の目安としている。
私が疲れないようにルウは声をかけてくれているのかもしれない。
優しいな。ルウは……っと、こうして考えがずれてしまうのは問題だ。
思い浮かばなければ物語が始まる前にルウを連れて逃げることは
大前提だけれどなるべくならルウを長生きさせてあげたいもの。頑張らないとね。