夢の歯車

22


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そこは宝物庫だ。データという名の宝を納める場所。
ORACLEという名のその宝物庫を守るドラゴンの名はオラトリオ。
守護者オラトリオに連れられて入ってきたのは人の娘、本来では決して入れないはずの人間である。
「やっぱり此処かぁ」
ORACLEに入る扉を前にして悠美は呟くように言う。
彼女からすると残念なことにエモーションの姿は無く、二人きりで扉の前に立っていた。
「会ったことがあると思うが、中で俺の相棒が待ってるはずだ」
「オラクルだよね?」
オラクルからも少女からも彼らが出会っていたことをオラトリオは知っている。
だからこそ、頷いて肯定の意を返したがワザワザ中ではなく扉の前に転移した理由であることを彼は訪ねる。
「確か此処でウィルスを撃退したんだってな?」
「ウィルス?」
「ナメクジ退治を覚えてるか?あれがウィルスプログラムだった」
理解できないというように首を傾げて問い返されればオラトリオは理解できるようにナメクジという単語を告げる。
それを聞いてその時のことを思い出したのか彼女は「あーあー」と、嫌そうな顔で言いながら頷き。
「あれね。嫌な感じがしたから塩をかけたヤツ」
「そう、それだ。俺からも礼を言っておく。ありがとう」
彼女はアレがウィルスプログラムの一つであり、かなりの出来だということを知らなかったようである。
そのプログラムを綺麗に消してしまったあたりは電脳世界において彼女は無力ではない。知識も経験も無くともどちらも後に補うことが出来る。
獅子身中の虫を自分はORACLEへと招き入れることになるのかもしれないとオラトリオが考えた時、悠美は彼を見上げ。
「どういたしまして、何の役に立ったのかはわからないけどさ」
少し照れたような笑みを見て、オラトリオは迷いを捨てる。
そうならないように彼女に正しい知識とその使い方を教えればいい、
電脳空間について教えるのに相応しいのは自分達以外にはいないのだから……っと。
オラトリオがそう考えてORACLEの扉を開けて、彼女を先に通す。

「ようこそ、ORACLEへ!、君を歓迎するよ」

彼女を迎え入れたのは管理者オラクル、歓迎の意味を込めて笑顔を浮かべている。
それと似たような笑みを悠美の後ろでオラトラオが浮かべているのを気付いたのはこの場に誰もいなかったが、
その瞬間から彼女はORACLEの管理者と守護者に受け入れられてORACLEの住人となったのである。

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