夢の歯車
〜6〜
彼にとってタイムリーというか何というかという気になる話題を持ってきたのは信彦からのメールだ。
「なっ!ゆっ、幽霊に出会っただと?」
キノコ狩りしたいというそんな教授に連れられて日本に帰っている信彦達はキノコ狩りをしてきたらしい。
それを聞いたのは信彦のメル友なオラクルであったがそのメールに幽霊に出会ったと信彦が打ってきたのだ。
いつもであればオラクルはその内容をオラトリオに言うことはないのだが、時期が時期だったからなのか彼へと報せてきた。
「偶然かな」
此処のところは聞いていないが、日本では幽霊やら吸血鬼やらと仲が良いらしい家族だ。
それに新しい幽霊のお友達が加わったのだとしてもおかしくない。おかしくないのだが…――
「どうだろうな――教授にご挨拶がてら様子を見てくるか」
気になって仕方がなかった。勘といえばいいのだろうものがその幽霊が自分が探している謎の侵入者と同じような気がしたのだ。
引退したとはいえど世界的権威である音井信之介の近辺に現れたのだからだろうとオラトリオが思考すれば。
「でも、いい人?だったらしいよ。迷子のちびの面倒見てくれてたんだって」
悠長な口調でオラクルが言ったが気になるものを彼は無視するきはない。
「いい人だろうといい幽霊だろうと、侵入者は侵入者なんだよ」
「一緒だとまだ決まったわけじゃないよ。オラトリオ」
そう指摘され、オラクルにいわれるまでもなく自分はわかっているとオラトリオは思う。
「わかってる」
何を熱くなっているのかと彼は気持ちを落ち着ける。
「……シンクタンクの侵入者のことを必要以上に意識してないかい?」
オラクルの言葉にオラトリオの思考が一瞬、ほんの一瞬であったが止まる。
言われた意味を理解しようとしてであったが……。
「そりゃ、古巣に侵入者は許せんだろ」
彼は侵入者を阻む『守護者』なのだ。ORACLEを護ることが使命だが頭脳集団アトランダムとて侵入されてよう気分はない。
侵入者が嫌いなのは彼の役目の為ではあるのだろうしっと、侵入者が気になることについてはそれで彼は説明付ける。
「そうか」
何かが違うような気がする。オラクルはそう思考をめぐらせたものの彼の相棒であるオラトリオには告げない。
確かに彼らは結びつきが深いしお互いのことを解り合えるが同一でないがゆえにやはり解らないことがある。
そして、解らないままにしておいた方がいいだろうこともまた確かにあるのだ。
今回もそのうちの一つだろうとオラクルは捉えてオラトリオが電脳世界から現実の世界に戻るのを見送った。