W大佐

最初に私の話を聞いて頂けますか?
〜3〜


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イオンのおかげでピオニーも私が仮定した話を限り無く高い可能性として信じ、避難民が出ることを予測したことで保存期間が長い食料を用意したり、瘴気治療の研究のための資金が大幅に上がった。
アクゼリュスに瘴気が充満して手遅れになる前に私達は計画を実行することにし、瘴気の話が出たときに街の住人達に避難を呼びかけた。でも、それをローレライ教団の詠師達が邪魔したために隠れていたイオンがその姿を世間に示し、ユリアの預言を大暴露してくれた。
彼には私が知る第七譜石の記された預言も話したのだけれど、それをさも自分が見たように言うその演技力は凄かった。それによって導師イオンは病気治療の為に公務が出きないとして、導師代理として大詠師のモースが表に出ていたローレライ教団は荒れに荒れた。
イオンのことを偽者だとローレライ教団は発表したが、イオンはグランコクマで預言を詠むと同時に秘預言である自分の死の預言を発表し、導師である自分ですら死の預言より逃げたというのに人々が逃げてはならない理由がないと真っ向からローレライ教団を非難したのだ。同時に彼は最も卑劣な導師だと己を称した。
私としては生きたいのは普通のことで生きられる道があるのならそちらを進むのが普通だと思う。愛する人が名誉のために死ぬというのなら不名誉でも生きていてほしい。
世界は大きく揺れマルクトはキムラスカへと外殻降下作戦に協力を求め、キムラスカはそれを否定し拒否した。ダアトは大詠師派と導師派に分かれて意見なんてまとまらないままだった。
ただアクゼリュスの住民の多くは他の大地に避難してくれたので、アクゼリュスが落ちた時の人的被害は少なく出来た。
一部残った人は預言の通りに生きたい人達だから無理には連れて行かなかった。そう生きたいというのなら他人である私達にはどうすることも出来ないことであったからだ。
軍で食材を届けはしたし残った人でも避難したいと申し出たら連れ帰ったりは最後まで行いはしたが、崩壊の半月前にはその支援は打ち切った。
崩壊後はダアトでもパッセージリングの耐久年数やら、何やらで導師派が増えキムラスカも強固な姿勢が緩んだ時に私達はゴリ押しに近い形でキムラスカに協力を取り付けた。
戦争をして一時的な繁栄をしたところで世界が滅んでしまえば無意味なものだと。何でか知らないけどヴァン・グランツもこっちの意見に賛成だった。
こちらとしては反対されないのは都合が良いし、ユリアの血筋なわけで計画に必要な要素の一つだしティアも兄と共に計画に参加してくれたのだ。私の世界のグランツ兄妹は仲良しのままだったらしい。
彼らがユリアの子孫であると知っていたイオンから、彼らに覚悟があるのならユリアの子孫だと発表させるべきだと言われた。
その意見は間違ってはいないと思ったけど、ユリアの子孫のせいで可能性を低くしたとはいえ瘴気を取り込んでもらう二人にこれ以上の重荷を背負わせるのもって考えたものだった。
結局は私が決めるよりも二人に判断をしてもらおうと話をしたら、子孫であることを彼らは公開することに決めた。
ユリアの子孫であり、ユリアの譜歌を継ぐフェンデ兄妹、ローレライ教団の最後の導師イオン、マルクト皇帝ピオニー。ここまで来てキムラスカ国王インゴベルト六世も重い腰をあげてくれたのは民衆に広く情報を提示しておいたことが大きかったと思う。
ただ世界の情勢がそうなってもなおモースとテオドーロは納得していなかったみたいだったけど、テオドーロのほうは家族の愛というかヴァンとティアに説得されていた。ヴァンが叱咤し、ティアが涙ながらに切々と訴えたらしいがそれを聞いて飴と鞭が上手い兄妹だと思った。
まさに世界が一丸になって世界の終わりを回避しようと動いたわけで、ローレライ解放と外殻降下を何とか無事に終わらせることができた。




これで世界の危機に怯えて眠る生活とおさらばだ!って、喜んだ私だったというのに気付いたらタタル渓谷って何事ですかね?
タルタロスの甲板で計画遂行を眺めていた罰ですか? 何かあった時のために移動要員だったからですか? ねぇ、ちょっと聞いてる? このお馬鹿っ!



っと、興奮のあまり段々と口汚くなってしまいましたね。これは失礼しました。
この・カーティスに何かご用件がおありでしたら、前以ってご連絡頂ければ有り難かったんですが……
ただの音素の塊ごときでは無理というものだったんでしょうね?
ええ、わかってます。わかってますよ。だからそう怯えて去るのは止めていただけませんか?
お願いですから私を元の場所、前世とは言いませんから・カーティスとしての世界に帰して下さい。
地殻に閉じ込められているから無理ってどうやってここに私を運んだんですか?
はっ?ここに連れてきたのは私の世界のローレライだったと……
なるほど貴方の要請に応えてくれたというのですね。わかりました。ええ、わかりましたよ。
貴方が解放された時には私を元に戻して頂ければ多少の協力は惜しみません。
多少ですよ。当たり前でしょう?この世界のことはこの世界の人が決めるべきですからね。
ええ、ええ、そういうことですので私は好きにさせて頂きますからね。
……もちろん貴方の解放はしてさしあげます。私の世界のローレライを潰す研究をしながらでもね。


さぁ、物語を始めましょうか。
        一人の喜劇役者が紛れ込んだ悲劇の物語を!

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