血迷軍2
大人しく黙って囲まれたまんまの私と囲んでいる迷彩男、忍者男、軍服男という非常識な格好をした3人組。
制服マニアとかそういう人たちなんだろうか。そして、私にも何か制服を着ろとでも言うつもり?
「なぁ、」
「私はナースの制服を着たりしませんからっ!」
軍服男に思わず断り言葉を告げる。そういや、この人も人の名前を知ってるんですね。
……3人目だから驚いたりはしないけどいかがなものだろうかとは思う。一体、誰が私の名前を顔写真と共に吹聴してるんだろう?
「……ナース?」
「違ったの?じゃあ、メイド服とか着ませんから」
首を傾げる忍者男。ナースじゃなかったのか。そうなるとご主人様とか言わせる為にメイド服とか着せるつもり?
「むっ、にはどちらも似合いそうだな」
何やら嬉しげな迷彩服男。やっぱり、着せるつもりだったのね。
「隊長、どんな説得の仕方をしたんだ?何か変な誤解されてるだろうが」
何やら呆れ顔の軍服男。ぐむぅと変な声を出した隊長と呼ばれてるらしい迷彩服男は。
「まだ何の説明もしていない」
キッパリと言い切った。確かにそのとおりなんだけど……。
「……」
彼以外の2人がしばらく無言になる。忍者服と軍服男の二人はお互いに顔を見合わせている。何をアイコンタクトしてたのだか、コクリッと忍者男が頷いた。
「殿、お話をよろしいでござるか?」
「正直なところは帰りたいですが、どうぞ」
二人で顔を見合わせていたのはどちらが話しかけるかという物だったらしい。確かに迷彩服男でないだけマシな選択だと思います。
「拙者達は血盟軍という集まりでござる」
あっ、戦争ごっこの人なのね。そうなるとコスプレするように強要はされなさそうだわ。
「はぁ、その集まりの皆さんが何のようですか?」
「実は殿にお願いがあるのでござるよ」
戦争ごっこするような人たちにお願いなんてされたくありません。されたくありませんが暴れられたりしたら、ただではすまないので黙って聞いておきます。
「拙者達の家に遊びに来てはくれないでござるか?」
「はいっ?」
信じられない言葉に思わず聞き返した。聞き返したというのに……。
「おぉ、やはりは来てくれるのかっ!」
がばっと迷彩服男が私の手を取って言った。承諾した覚えはないんだけど……。
「あれって聞き返したんじゃないか?」
そうそう。
「いや、「はい、喜んで」と言ったのが聞こえたぞ」
あんたの耳は腐ってる。完璧に腐ってるっ!怒りなのか何なのか混乱している私は突っ込みたくても突っ込めない。迷彩服男についての恐怖はインプットされているらしい。
「もちろん、毎日というわけではないでござるよ」
フォローの為に忍者服男が言った。
「毎日って、一回だけじゃないの?」
まずい。この言い方だと1回は行くことを同意したみたいじゃない。この言葉を撤回しないといけない。
「あっ、その行くとかじゃ…きゃあぁぁぁっ!」
撤回しようとした私の身体は宙に浮く。そうして、米俵のように迷彩服男の肩に担ぎ上げられた。
「隊長っ!」
「ソルジャー殿、何を」
忍者男と軍服男の二人にもこの行動は驚きだったらしい。
「こんな所で立ち話をしとらんと家で茶でも飲むとしよう」
「ちょっ、ちょっとぉ!降ろしなさいよぉ!」
両手で男の背中を思いっきり叩く。それだというのに少しも痛そうな様子すら見せずに男が笑って。
「遠慮するな」
「遠慮なんかじゃないわよっ!」
何、爽やかそうな雰囲気で言ってるのよ。これっぽっちも爽やかじゃないわよ。
「……ソルジャー殿、うら若い娘に対しての態度ではないのではないでござるか?」
「細かいことは気にするな。ニンジャ」
細かくない。
「細かいか?」
そこの軍服男さん、あんたの言葉は正しいっ!正しいからそんな小声で呟かないでっ!
「ちょっと、悠長に話してないで何とかしてよ」
迷彩服男とは違って二人はまだ比較的にまともらしい。それならば何とか私は降ろしてもらえるんじゃないかと淡い期待を抱く。
「仕方がないでござる」
「まっ、隊長のすることだし勘弁してくれないか?」
抱いた期待はすぐさま崩れ去った。口々にため息をつきつつ言った二人の言葉によって。
「勘弁できるもんですかっ!」
まともだと思った私が馬鹿だったわ。
「拙者はお茶を淹れに一足早く戻るとするでござるよ」
「頼むぞ。ニンジャ」
そう忍者男は言うと……消えた。瞬きする間も無く私の視界から消えたのだ。
「……えっ?」
素早い動きをしたとしても消えたように動くなんて無理じゃない?
でも、そういえば達人とかの動きは素人には把握できないって言うわよね。
……呆然と私はユラユラと揺られながら運ばれていた。