血迷軍1
迷彩服。それは、森等野外での活動において発見されない様にと開発されたもので本来ならばカメレオンの保護色と同じ効果を狙ったもののはずだけれど。
「街では反対に目立つものよね」
迷彩服を着た電柱に隠れきれない巨体の持ち主が私をつけている様な気がする。
気のせい。そう、気のせいだと信じたいが気になって一度振り返る。するとやはり電柱に隠しきれてない巨体が……。
「……っ」
あまりものプレッシャーに思わず駆け出す。
「ぐむっ!」
よくわからない奇声を上げた迷彩服の巨漢。先に駆け出したはずの私を追い抜き走る……まさに一瞬のこと。
「えっ?」
彼から逃げる為に走り出したはずの私は2、3歩余分に走ってから止まる。
最早、見えなくなった迷彩服の男。
「きっ、気のせいだったのかもね」
引き攣った笑みでも笑みを浮かべて私は頷く。
うん、そうよ。
迷彩服の巨漢なんかがこの道端にいるわけがない。私は無理矢理に自分を納得させて歩き始める。
ドカドカッ、バキッ。
喧嘩の時に使用しそうな効果音が聞こえてくる。
「どうしよう」
此処で見なかったふりをした方が賢いかも。でも、それだと後で後悔しそうだし……。
「危なさそうなら、警察でも呼ぼう」
恐る恐ると覗く。其処には……。
「青少年達よっ!カツアゲはいかんっ!」
と、説教をしながらブロック塀を壊している迷彩服の男。真面目そうな子が1人、悪ぶってそうな子が3人だが、仲良くその4人は怯えきっている。
「殴られれば痛いっ!その痛みを知らずにして…」
この説教の流れだとカツアゲしていた少年達が……っ!
「ちょっと!」
私は有りっ丈の勇気を奮って行動を起した。どれだけの身長の差か考えたくもないほどに背の高い彼。
「何か彼等に伝えたいことがあるのか?」
彼等にじゃなくて、貴方になんですけどね。
「君達、カツアゲはいけないわ。皆で仲良くして……そうしないと、こういう目にまた合うかもしれないから」
コクコクッと頷く4人。余程、怖い思いをしているらしい。
「もう一度、そういうことをしているのを見られたらどうなるか」
「、それぐらいにしておいた方がよいだろう」
ポンッと私の肩に手が置かれる。
「君達も私達のように人の傷みが解る大人になれ」
……私達?私と貴方は同じカテゴリーですか?それに、今、名前を呼びませんでしたか?
ほら、その所為で男の子達が貴方と私を同類だと判断したように見てます。
「よし、行って良し」
迷彩服の男の言葉にわーっと逃げるように駆け出す少年達。その様子をほのぼのとした様子で。
「男の子はやはり元気が一番だ」
と、のたまう迷彩男。どう考えても逃げてるしか見えないんですけど。
「ソルジャー殿、あれとはどう見ても貴殿に怯えてるのでは」
うんうん。
「ニンジャ、お前の目が節穴だとは知らなかったぞ」
節穴は自分だって。私は2人の大男に囲まれながら……って、2人?
「節穴ではないでござる」
ニンジャという言葉通りに忍者姿の男。……迷彩服の男と忍者姿の男。
どうしよう。どっちもどっちな人に囲まれてます。すみません、誰か助けてください。
私とこの二人以外、誰もいないこの道で私は心からの助けを求めた。
そんな私の心からの救済が聞こえたのか、普段はあまり人が通らないはずのこの道に現れる一つの人影。
「2人とも何をしてるんだ?」
現れた軍服姿の男は呆れた様に二人へと話しかけた。……コスプレマニアの集まり?一般的な格好な私の方が浮いてるように思えてくる。
「ブロッケンJr、見てわからんか?」
「わからねぇから聞いてるんだよ。隊長」
えっと、迷彩服姿の男が隊長ってことはこの人たちは戦争ごっことかしてる人達?だったら、この変な格好も一応は説明つくけど森とか人が居ないところでそういうことはして欲しいものだわ。
「を説得しようとしているというのにだな。それをニンジャが邪魔をしているという図だ」
せっ、説得?いつ、されそうになったけ。って、やっぱり私の名前を言ってるや。
「拙者が見ていた限りでは子ども等に説教していただけでござろう」
「うんうん」
思わず、私も頷く。そんな私の行動を誰も気に止めてないらしく彼等の話は続く。
「まぁ、事情は大体はわかった」
わかったのっ!凄い、凄すぎる……以心伝心ってヤツかしらねぇ。私を中心にして話し合ってる男3人。
迷彩服、忍者姿、軍人姿の彼らは私を囲んでいる……状況は確実に悪化している気がする。
泣きたいのに泣けない時ってこういう時かも知れない。私は頭上の彼等のやり取りを半分諦め、半分苛立ちと共に聞いているしかなかった。