偽りの奇跡

本編 〜19〜


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マク・アヌに戻り@ホームに向かう。
@ホームにはシラバスからのメールの通りにシラバスとガスパーの姿。
「お待たせ」
メールを確認してすぐに来たからそれほど待たせていないはずだけど、
二人が待っていたのは事実だし、そう声をかければ二人とも振り返り。
ッ!来てくれたんだ。よかった」
「待ってたぞぉ」
それぞれの笑顔で私を歓迎してくれた。
このThe Worldで裏表無く私を歓迎してくれるのって、たぶん二人だけよね。
私は二人に近づいてから立ち止まると口を開く。
「何かあった?」
話したいこととあったから相談と決まったわけではないけれど、何も無いのならわざわざメールまでしないだろう。
いや、もしかしたらシラバスはメール魔なのかもしれないけどさ。ガスパーと一緒に待ってるんだから何かあるに決まってる。
はハセヲのことを知ってるよね」
「ハセヲ?」
二人が彼と出会ったことは知っているけれど、それを私にわざわざ話すことだとは思えなくてその疑問に声を上げる。
「死の恐怖のハセヲのことだぞぉ、前会ったって話してた」
ガスパーは私がハセヲを忘れていると考えたのか補足してくれる。
彼らにはハセヲとメンバーアドレスを交換したとまでは話してなかったし、その誤解もありか。
「いや、ハセヲのこと覚えているけどさ。二人から彼の名前を聞くとは思わなくて」
今はまだとはつくけれど私の言葉は嘘じゃない。でも、何となく騙している気がして微妙な気持ちになる。
「あのね。僕達、クーンさんに言われハセヲに話しかけたんだ。それに接してみてハセヲ自身が良い奴だってわかったし……」
「はっ?」
「ハセヲ、ちょっと言葉遣いは乱暴だけど優しいぞぉ」
シラバスの言葉に鼻に抜けるような、かなり間抜けな声を出してしまった。
ハセヲについての周囲の意見からして確かに良い奴っていうのはそういった反応でもおかしくないかもしれないけど。
あの態度も、どうしてあんな風なのかも多少は知っているから他の人よりも受け入れやすいからそれは気にしちゃいない。
「あのね、ガスパー。ハセヲのことじゃなくてクーンがどうのって聞こえたんですけど?」
私が気になったのは二人のハセヲとの出会いが偶然ではなく、必然だったということ。
確かに妙に二人はハセヲについて強引だったけどさ。あれが芝居だって言うのならどれだけ芝居上手いのよ。
「そのさ、クーンさんに頼まれたんだよ。ハセヲの力になって欲しいって」
「……そうなんだ」
どうしよう、ため息つきたい。
にも頼んだのかってクーンさんに聞いたらには頼む必要はないだろうからって言ってたんだけど」
「まぁ、ハセヲは知り合いだしね。……少し前に会ったし」
頼まれる必要もなくレベル上げとか手助けする予定だったけどクーンってばそんな裏工作してたわけ?
何だか妙に計算高く思えて印象が変わってしまいそうなんですけどね。カレーな人。
「そっか。知り合いなんだ。あっ、でもハセヲのレベルが下がったのは知らないよね?」
「知ってる。データ消えたって話だからメンバーアドレスまた渡しといた」
会ってメンバーアドレスまで渡しているのに知らないとは言えないし正直に答えておく。
「……って時々、妙に行動が早いよね」
「うんうん、凄いタイミングだぞぉ」
「なっ、何を言ってるの」
妙に息の合った二人の言葉に私は慌てる。確かに怪しいかもしれないけどハセヲの行動を知っていただけでストーカーはしてない。
いや、知っていてハセヲに会ったのだからストーカーかな?っと、嫌な考えが浮かぶ。
「それじゃあ、ハセヲをカナードに誘うのって反対じゃないよね?」
二人には特にそれ以上突っ込まれなかったけど焦った私が馬鹿みたいだ。自分でストーカー疑惑とか出してるところが余計にへこむ。
「あっ、うん」
カナードのギルマスを押し付けてやる予定なんですからね。
「よかった。ギルドマスターの承認は必要だからさ」
ギルドランクの低いカナードはギルドマスターがすることは多い。
ギルドショップの商品管理や売り上げ管理もそうだし、何よりギルドメンバーの承認は大事。
メンバーを増やしてギルドを大きくすることでギルドランクを上げる方法もあるらしいけど、今は二大勢力があってそこに大抵は所属しちゃう所為かそこまで上げられるようなギルドはない。
少数人数でコツコツと上げていくしかないというのに今現在はシステム大幅見直しとかでギルドランクを上げられない状態だしね。
「よし、ついでにハセヲにギルドマスターを押し付けちゃおう」
私としては決定事項だけれど二人にはまだ話していない。だから、ついでとばかりに此処で押し付ける話をしておこう。
「えっ」「えぇ!」
シラバスとガスパーが驚きの声を上げた。わざわざ仰け反りアクションまでつけて。
「面倒見いいしさ、ギルマスにしたら嫌でもカナードに来るんじゃないかな」
あくまでもハセヲを引き入れる手段としてのように話しながら二人の反応を確認する。
「なるほど、それはそうかも」
「良い考えだぞう」
私の言葉に納得するものがあったらしい二人は頷いて、どうやって入ってもらおうか?とか積極的に話す。
ハセヲが居ない間に素敵にカナードのギルドマスター押し付け計画を話し合う三人。
結局のところはなる様になれということで、『話の流れでカナードに引き込んじゃおう作戦』という作戦でも何でもない方針が出来上がる。
ハセヲは意外と押しに弱いし、シラバスからのあの誘いで入ったのを考えると大丈夫だろうけどね。
誘う時は本気で誘ってやる……覚悟しておいてね、ハセヲ。

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