君護り

Web拍手おまけ3


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気がついたら昔遊んだ記憶のあるRPGの主人公になっているらしい。
今の私には王様を辞めた記憶がないんだけど死んだのだろうか? ここに居るということはたぶんそうなんだろう。まぁ、死んだのなら今更どうにもならないし焦ることはない。
ただいま3度目っぽい人生がはじまろうとしているわけだし。男性は初、あと本人と思われる精神も一緒なのも。若い子というには若すぎる子との嬉し恥かしの精神同居生活の始まりである。
その同居生活の当人であるもう一人は私と違って好悪の意思表示はあれど言葉という明確な形ではないので一先ずは私の意思で動かさせてらうことにして、派手な男が私を放置していった場所から動くことにした。この身体は布切れ一枚しかまとっておらず動きもぎこちないが頑張ればいけそうだ。
RPGの主人公になったぽいとは思ったものの実は覚えてることは多くはない。覚えていることは主人公は王族のクローンだかなんだかでラスボスに作られて存在で発見されるとオリジナルの子の屋敷に軟禁され、将来は世界のために命捧げていたような……という曖昧なものだ。
RPGの主人公っぽいとか思い出しただけでも奇跡である。何百年前のことをよく覚えていたよっと私を褒めてあげたいと思うというか褒め称えた。
そういう、あやふや過ぎる記憶なのでこの世界での生き方なんて知らないので将来的なことを考えれば保護されるのも手かもしれないが世話されると情がわいて逃亡する時に心が痛みそうだしね。私は痛むだけで逃げるだろうけどもう一人が逃げないかもっと考えて逃亡生活を選択した。
自由を求めて歩き出す0歳児とかって何て嫌な想像図か。『ばぶばぶぶばぁー!(俺は自由だぜ!)』と赤ん坊が光速ハイハイとかでも嫌だけど。そんな下らない想像をしながらふらふらと歩く子どもという図は魔物の格好の獲物である。人ではない生き物の気配が近づいてくるのが感じられたので周囲を警戒し息を整える。この手には長年使い続けた愛剣はない。景の王でなくなった私が持つべきものではなくなったのだから仕方がないことなのだろうけど。馴れない身体それも子どもでは魔物に勝つのは至難の技だ。木々の間に身を隠すしか術はないと隠れて道を進んだ。
そうしてふらふらとさ迷い歩いている時にそういえば髪の色とかが王族の証だったようなと思い出し草で適当に髪を染め、私達は運がよかったようで魔物に殺されることなく生きて街にたどり着くことが出来たので保護されることになり、そこで気付いたが私は素晴らしいことに新しくまた言葉を覚えるという手間をしなくてすんだ。何故かはわからないが便利だから助かった。きっと前世で私が頑張ったご褒美だったのだろう。
さて、保護された後は最初に風呂に入れられそうになったが断固として拒否、怯えた目で風呂入れようとした人間を見て、それでも入れようとしたら暴れた。風呂とか入れられたら髪の色がばれて軟禁ルートだとか勘弁っと、必死で怯えたふりで部屋の隅に居たらまともな服と食事を保護してくれた人達は部屋に置いていってくれたので、いつかご恩返し出来たら返しますと思いつつ、まともな食事のうちパンだけを手にとって逃亡した。温かなスープに手をつけなかったのはこういう面倒な子どもは睡眠薬でもいれて寝かせて身繕いしようと考えられる可能性があるからだ。
汚れていたら病気になるかもしれないし悪いことではないだろうが今の私には面倒なことになる。身奇麗にしたい誘惑は心は女の子なのでもちろんあるんだけどね。頂いたパンを食べて何とか活力をゲットし、次の日は朝早くから馬ではない生き物にひかれている幌があるタイプの荷台の荷物の間に転がり込み、奥のほうでじっとうずくまっていたら無事に街から抜け出して馬車が進んでいき別の街についた。
馬車の持ち主が荷台を調べたときには流石に中に居たことに気付かれて逃げ出すことになったが捕まらなかったのでそれに味をしめ、似たようなことを繰り返した。そうやって逃げる自分がずっと意識していた彼女、私の次に王となるはずだった陽子を思い出せたが彼女はもうとっくに亡くなっているはずなので私の次の王は彼女ではない慶の民のはずだとそんな思考はすぐに捨てた。
逃亡生活を続けていたが、そんな生活は子どもによい影響を与えるはずもなく私の中の彼は大人に怯えるようになっていった。特に身体の大きな男性に。ちょっとまずいかもとは考えはしたけれど一度選んだ道を戻ることは出来ず、私は逃げて逃げてある街でとうとう捕まった。いや、保護されたと考えたほうが気分的にはよいので保護されたとしよう。
逃げようとする私を彼らは身奇麗にしてくれたが赤い髪はやはりまずかったようで色々と質問されたので、私の語るも涙な嘘八百な物語を語ってあげることにした。
母親と二人きりでずっと暮らしていたこと、母親には髪を染めるように言われてそうしてこと。いつもと同じように過ごしていたはずなのに変な男達がきて母親と自分を家から連れ出し、母親は途中で男達の隙をついて私を捕まえていた人から私を逃がし、母親に言われるがまま自分は駆け出したがその後すぐに母親の悲鳴が聞こえて怖かったとか。色々と想像できるように語る。嘘八百の物語を語る時のコツは事細かに設定を全部言わずに相手の想像に任せることが肝心です。
彼らの中では高貴な血筋のご落胤でそれを利用されそうになり母親は子どもを庇って殺されて、子どもは母親の言い付け守って逃げていたとでも想像してくれることだろう。
そんな自分の話を聞いた人間の中で同情的な視線を浮かべた人間が居たのでちょろいとか考えたのがダメだったらしい。



自分を保護したのは敵側だった。青い制服のやつ等が敵国の人間だとか覚えているわけないので仕方がなかったと思うことにした。
一応は身奇麗にはしてもらってはいるが見張りはしっかりとつけられいる。
保護という名目で何処かの小さな屋敷で保護してくれている男、マルクトの皇帝様とやらに感謝しなければいけないらしい。
自分を飼いならす時間を求めているのかそれとも効果的に使うタイミングでも待っているのかこの屋敷でかなりの期間を過ごしていた。
体感としては5年ぐらいは居た気がするがこの世界では3年弱とか意味がわからない。
十二国記の世界では大体同じぐらいだったからこの違いはなかなか慣れなくて面倒だ。
いっそうのこと殺されるような事態となれば暴れてやるんだけどな。
大人しく過ごしていたある日、見知らぬ男達が訪ねてきた。
私が今も思い起こすことが出来る髪よりも濃い金髪の青い瞳をした褐色の肌の男と明るい茶髪の紅い瞳をした美形な男達はそれぞれ笑みを浮かべていた。
二人共が作り笑いだが特に茶髪の笑顔が目が笑っておらず胡散臭すぎるのが困る。
「よう、お前がシュトルツか?」
古代インスパニア語で誇りという意味らしい名を呼ばれる。これは私が名乗ったわけではなく付けられた名だ。
名をつけたのはかなり私に同情的であったレーヴェという男で時折訪れては私に土産や外の話をしてくれる人だ。
地位が高いのか普段の見張りをしている人々に敬礼されてたりしたが正確な地位は聞いていない。
そういったことに興味を示すと小賢しい子どもと思われて面倒になるかもしれないからだ。
「そう呼ばれています」
頷き答えれば金髪は何が面白いのか作り笑いを本物の笑みに変え。
「レーヴェの言うとおりのヤツだな」
(うわっ!)
乱暴に頭を撫でられる。折角梳かした髪がぐしゃぐしゃになるし、勢い撫でるから頭が動く。
私の中にいる彼が怯えて意識の奥のほうに引っ込んでしまったので止めていただけないかと思いながらも私のことに関する責任者であるらしい男の名を出されたので何か動きがあるのかと大人しくしておく。
「子どもらしくありませんねぇ」
「お前が言っても説得力がないぞ」
男達の様子からして血生臭いことにすぐになるとは思えないけど。
「何か御用でしょうか?」
まだ乗ったままの手を落とすために一歩下がる。
動こうとした瞬間に茶髪がこちらの行動に目を光らせたのがうざ過ぎる。
「あのなお前を保護していた男が死んだ」
(、レーヴェが死んだって!)
(そうと決まったわけじゃない)
金髪男の言葉に動揺する彼を落ち着かせるために声をかけ。
「だからレーヴェは来られなかったんですか?」
先日来た時は元気にしていた姿を思い起こす。
若いとはいえないがまだ亡くなるのには早すぎる気がした。
「違いますよ。亡くなったのは彼ではなく前皇帝です」
(そうか。よかっ……よくないのか。会ったことないけど世話してくれてた人だもんな)
(そうだね。機会があったらお墓参りに行こうか)
なるほど確かに私を保護するように最終的な許可を出した人かもしれない。
直接的に書類に判を押していなくても口で許可ぐらいは言っただろう。
「私は今後どうなりますか?」
わざわざそんな話だけをしに来たわけではあるまい。
前皇帝が残していった他国のご落胤なんて利用するか面倒だから捨てるか。
捨てるときに後々面倒にならないように始末するかもしれないから逃げられるようにはしたほうがいいかな。
「……お前はどうしたい」
「剣と多少の金銭をいただければ助かります」
この世界の魔物は何でだかお金を落としてくれるらしいので返せというのなら返すぞ。
とはいえ、人を監禁していたのだからそれぐらいの金は駄賃としてくれというのが正直なところだ。
「それを貰ってどうするつもりだ」
「ここを出て生きていくだけです」
(外に行くのか!)
屋敷の外に行きたいと常々訴えていた彼が興奮した。
遊びたい盛りなので無理もない。
「だったら、別にここに居てもいいんじゃないのか?」
望めばこの屋敷にこのまま居てもいいと言うつもりなのか?
確かに私はニート思考がある人間ではあるが……
「ここは私の居場所ではないから」
居心地がよいとはお世辞にも言えないところでのんびりと過ごす趣味はない。
お金をためて小さくてもいいから家を持ってのんびり過ごすつもりだ。
世界は主人公不在なので他の誰かが救っていただければ大変に助かる。
「そうか。なら、お前を引き取りたいという男がいるんだがそいつの息子にならないか?」
「その人は……」
どんなお人好しですかっと言おうとしてそんなことを言い出しそうな人間は一人ぐらいしかいないことに気付く。
「レーヴェ?」
(レーヴェの家に行くなら俺行きたい)
「ああ、そうだ」
頷いた金髪男、そういえば彼らは人の名前を知っていたが名乗らなかったな。
こういう場合は面倒なことになりそうな気がするので聞く気はないが。
「彼には息子さんがいらっしゃると聞いています」
「もう成人している」
妻は亡くなっており息子は軍人として一人立ちしたとも聞いてはいたが家族が居るのにわけありの子どもを引き取るのは如何なものか。
下手すると上に睨まれて大変な思いをレーヴェだけでなく息子さんまでしてしまうことになる。
「それでも私のような者を家に入れないほうがレーヴェや息子さんのためだと思う」
(うう、俺はレーヴェの家に行きたいのに)
彼の文句はこの場は無視だ。この屋敷に居る間に体調も整えたし、体力もついた。
実戦から遠ざかってはいるが剣があれば魔物に勝つことは難しくはないはずだ。庇護を求めるような要素は私にはない。
私の中のもう一人、私が瞳の色からリーフと名付けた彼はレーヴェを気に入っているから出来るなら恐怖症克服の為にも……
「ただ会いに行くのは許してくれると嬉しいと伝え……」
いきなり金髪男が人を抱きしめたものだから、空気が押し出されて情けない音が出そうになった口を閉じる。
同時に彼が悲鳴を上げることもなく心の奥に引っ込んでしまったことに気付いた。
説得する手間は省けたが慰める手間を考えると後々の疲労感は想像したくない。
「やばいジェイド!こいつ可愛いぞ」
「だからといっていきなり抱きつくのは如何なものかと。相手は男の子ですよ?」
呆れたように言うくせにジェイドと呼ばれた男は助ける気はなさそうだ。
「女の子だったほうが問題だろ?なぁ」
「はぁ」
曖昧に頷いたが確かに成人男性がいきなり親しくもない女の子に抱きつけば大問題だ。
そもそも初対面の人間に抱きつくこと事態が問題ではなかろうか。
「よし!レーヴェの息子にならないのなら、コイツの息子でどうだ?」
コイツと示されたのは茶髪男、愛想笑いも上手く出来ないような男は遠慮する。
こういう人間は周りの人間関係が不調和音を奏でてることが多い。しなくてもいい苦労はしたくない。
「ピオニー、貴方は何を言っているんですか」
「そうですよ。ピオニー陛下、この子は私が息子にすると言っているではありませんか」
扉がいきなり開いて入ってきたのは銀髪で褐色肌をした初老の見慣れた男レーヴェだ。
穏やかな物言いと笑顔はいつもと変わらないが何やら雰囲気が違う気がする。
「レーヴェ、話をつけるまで待っていろと言っただろうが」
「待っていてはシュトルツが私の息子にはならなさそうだからですよ」
「俺も気に入ったんだ。少しぐらいはいいだろうが?」
「ダメです。ピオニー陛下はノリで決めてしまってもそのままにします」
何だこれは?収拾がつかない様子に部屋の中に居るもう一人の視線を送るが赤い瞳の主は涼しい顔だ。
「私のために争わないでっとでも言えばいいのか?」
思わず素で突っ込んだ。
そうすれば2人は黙り、3人の視線が私へと注目し。
「そうだな。シュトルツに決めてもらうか」
知りたくなかった名前と役職、ピオニー皇帝が私を真面目な顔で見つめて言っているが楽しそうな気配は隠しきれていない。
「そうですね。その方が納得できるでしょう。私の息子になって兄を持つか」
「コイツの息子になるかそして、俺の息子になるもありだぞ」
最後の一言をごく当たり前のよう付け加えた皇帝陛下に脱力した。
「陛下、流石にそれは……」
「ピオニー、何を考えているんですか?」
私も2人意見に賛成だ。十二国ではないここは血筋で決めるはずだ。
皇帝である彼は血の繋がった子どもを残し、その子どもを次期後継者として相応しく育てあげる義務がある。
そのために血の繋がらない息子などは無用の長物というもので継承者争いが起きる可能性を高めるものだ。
何を考えているのかと金髪男を見つめれば男は笑い。
「冗談だ。そんな呆れた顔をするなシュトルツ……それで答えは決まったか?」
一つの国の統治者となった男が私の心を見透かそうとするように見つめてきた。
私はその瞳に応えるために正直な気持ちを私は告げる。

「貴方達といると面倒っぽいんで剣と小さな家を買うぐらいの金を下さい」

もう権力はお腹一杯。私に必要なのは居心地の良いお家。そこでリーフと楽しく暮らすんで一つよろしく。
約3年に及ぶ監禁の慰謝料として皇帝に請求する金額としては安いもんじゃない?





IF ルークに憑依したのが予王なり変わり主 おまけ



銀髪で灰色がかった青い瞳の褐色の青年は彼の父親であるレーヴェとよく似ていた。違いは瞳の色ぐらいでレーヴェは灰褐色の瞳をしてる。
2人の血縁関係を疑うことなど出来ないほどで、彼が歳を取ればレーヴェのようになるだろうと思わせた。
「初めまして、私はアスラン・フリングス。君の兄となる。仲良くしてくれると嬉しい」
(うわぁ、レーヴェに似てるな!)
私の心境を知らないリーフが興奮したように頭の中で叫んだ。
レーヴェの申し込みを断りきれず息子であるアスランが難色を示せば白紙に戻すという条件で頷いてしまった。
ああいう優しげな顔をしているヤツこそ面倒だと忘れていた私の敗因である。
そして、最後の頼りとなる息子である彼アスランとの初対面でその希望も潰えた。
「……初めまして、シュトルツです」
「シュトルツは父が付けた名だろう?本当の名を聞いてもいいかな」
さて、これは何と答えるべきだろう。
私の名であるか、リーフの名か、知らないがオリジナルの名か。
「シュトルツと呼んで下さい」
面倒……いや、ここは無難に名付けられた名で押し通すべきだ。
「兄の私だけにそっと教えてくれないかな?」
(、教えてあげれば?)
(いや、これは意地だよ。リーフ)
にこっと微笑む彼に私もにっこりと微笑み返す。
その様子を見守るのはレーヴェで彼もまた微笑みを浮かべて私達を見ていた。
これが日常茶飯事になるとは思ってもいなかった。
会えば名前を教えて欲しいと一度はいう義兄アスランと笑顔の攻防。
そこに何故か高確率で現れる義父レーヴェは何が面白いのか不明だがいつも微笑んで私達を見つめていた。
そのせいかマルクトの微笑み家族って異名をいつのまにかゲットしていた。恥かしすぎる通称である。




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