君護り
Web拍手おまけ2
いつもよりも覚醒が遅いのは昨夜、ルウとお喋りして夜更かしをしてしまったからだろう。
昨日の疲れが残っているのか身体がだるくてもう一度眠りたくなる。
ああ、でも私は今は公爵子息なのだから病気でないのなら起きなければと思いつつも起きる気力が湧いてこない。
私は隣にある心地良い温もりにいっそうに引っ付いたところで頭に浮かんだ疑問に意識が浮上した。
「……なに?」
昨夜は一人でベットに横たわったはずなのに隣に何があるというのか。
温もりの元を確かめるために重い目蓋を開けて見てみれば見覚えのある朱の髪。
なんだルウがそこに寝ているのかと一安心して目を閉じたけど慌てて身を起した。
「なっ、ななな何で?」
上半身だけ身を起した状態で隣を再確認すれば朱色の髪をした少年が眠っている。
まさか元の身体を取り戻したのかと自分の胸に手を置けば膨らみを感じた。
「あれ、小さい」
それに視界の隅には少年と同じ朱色の髪が見えている。
私が元の身体に戻ったというよりも分裂したというのが正しいのかもしれない。
(ルウ、ルウ!)
もしかしたら隣の少年はルウとは違うかもしれないと中に居るかもしれないルウに呼びかければ隣の少年がもぞもぞと動き出し。
「んー……何、ねー?」
薄っすらと目を開けて綺麗な翡翠の瞳がこちらを見ている。
その瞳に映ったのは驚いたようなルウによく似た少女の姿。
(何というか。そのルウだよね?)
「そうだよ?どうかしたの?ねー、まだ眠いよ。僕)
私の心の声に音声で答えていたルウは後半は心の声となり目を瞑った。
「まだ寝てていいよ。ルウ」
この時間は私だけ起きて活動している時間だ。ルウはあと1時間ほどは睡眠時間なので眠いのだろう。
そう推測できたので彼を気遣って私は起き上がるとルウに毛布をかけ直す。
起き上がり姿見で今の自分を確認すれば性別が違うものの14歳という年齢では見た目はルウとあまり変化は無いようだ。
筋肉が落ち頬は少し丸みがあるし胸もあるが服を着ていればあるとわからない程度なので普段の服装をすれば男だと思われるだろう。
ガイが来る時間にはもう少しあるがルウの睡眠を邪魔したくないし着替えて彼を部屋の外で待とう。
そうと決めると私は昨日のうちに着ると決めていた服を着て身嗜みを整え、ルウが今日着る服を準備して置いておく。
部屋を出る前に姿見で確認すればいつもと同じように公爵子息の姿をした私が居る。
「よし」
一つ頷いて私はベットで眠るルウの幸せそうな寝顔を見つめる。
「ルウ、行ってくるね」
そっと声をかけてから私は部屋を出て、扉の前でガイが来るのを待った。
扉の前でぼんやりと待っていると廊下の先から現れたガイが立ち止まり。
「ルーク様?」
戸惑ったような彼のその声に私は視線向け。
「ガイ、おはよう」
「おはようございます。どうされたんですか?」
彼は一度止めた足を速めてこちらへと近づいてきたが私はそのガイに止まるように手を上げ。
「今日は部屋は整えなくていいよ」
いつもと違った指示を出した。
「よろしいのですか?」
言われたことを理解はしたものの理由がわからないのだろうガイが首を傾げている。
「ルウが寝てるから」
「ルウ様が寝て……悪いけど意味がわかんないんだが」
事実を説明したというのにガイが素で返答してきた。
近場に誰も居ないからといってこの時間はどこに誰が居るのかわからないのにっとガイを睨みつつ。
「ベットでルウが寝てるからシーツ交換できないでしょう」
「なるほどって何を言ってるんだ?」
一度は納得したように頷いたのにすぐさまガイが大声を上げた。
「ガイ、誰に聞かれるかわからないでしょうが」
朝っぱらから何という大声を出すのか。
万が一にもルウが起きてしまったりしたらどうするのという心の声は言わないでおく。
「あっ、すみません。いや、それは反省致しますがルウ様がベットで寝てるとはどういうことなのかが意味がわかりません」
「私もわからないんだから説明できない」
そもそも私がこの世界に居ること事態が説明できないんだから分裂したぐらいは可愛いものだ。
「……そうなんですか。ならどうしてルウ様を寝かせたままなんです?」
「だって、ルウが眠いって」
「いや、流石にそれは今回は起こしたほうが」
私の返答にガイは呆れたように言った。
そしてその言葉の通りに部屋に入ろうとするので私が部屋の前に立ち塞がる。
「ガイ、止めなさい」
引く気はないという気持ちを込めて睨みつければ彼はため息をつき。
「それなら本当にルウ様が寝ているのか確かめに行かせて下さい。今は起こしませんから」
「私が幻覚を見てるとでも?」
私には確かにルウが見えたし触れられた。
だというのにガイはそれを疑うのかと苛立てば困ったように彼は笑い。
「寝惚けてて見間違えたとかはありえると思いまして」
「そう、そうかもね。入ってもいいですよ」
腫れ物に触れるようなその扱いに今度は私のほうがため息をついてガイを部屋の中へと招く。
「失礼致します」
ルウが大事だとことあるごとに彼に告げていたが、ガイとしてはそれは正しいことだと思えないみたいだ。
彼の言動の節々に私のルウに対する感情や行動を否定するようなところがある。
……一応は私やルウを思ってのことだろうとは思うので我慢はしているが苛立つのは仕方がないと思う。
私にはベットの上に膨らんだように見える上掛けにガイが手をかけて捲る。
「、やばい」
「何?」
自室なので誰も来ないとわかっているので普段のように話せばガイが青ざめた顔でこちらを見て。
「俺にもルウが見える」
「当たり前、私がルウを見間違うわけない」
「いやいや、そういう問題じゃないだろうがっ!」
起こさないと約束したというのにガイが叫んだ。
ベットの横なんて至近距離で叫んだらルウが起きるじゃないか。
「ガイ、うるさい……」
「悪い。ルウ」
やはりルウは起きてしまったらしく身を起すと隣のガイを睨んでいる。
ルウの寝起きの間延びした声は可愛いのだと発見しつつも私もガイを睨み。
「起こさないと約束したのに」
「普通は驚くだろうが!一体全体どうして二人になってるんだ」
反省した様子なく騒ぐガイの横でまだ眠いらしく目を擦りながらルウが口を開き。
「ローレライパワーだって変なのが夢の中で言ってた」
「なるほどローレライね」
第七音素の塊であるルウと私を分割するぐらいは簡単なのかもしれない。
それなら納得であると頷いているとガイはそんな私とルウを見つめ。
「なっ、なぁ……ローレライって第七音素のだよな?そこは驚くところじゃないのか?」
自信なさげに訊ねてくる彼の様子にルウが首を傾げ。
「そうなの?よくわかんない。ねーはわかる?」
「」
円らな瞳でこちらを見てくるルウと縋るような視線を向けてくるガイ。
後者の視線を少し鬱陶しいと思いつつもルウに聞かれたからと口を開く。
「世間一般的にはローレライはユリアとしか接触したことがないから珍しいとされてるの」
「へぇ、じゃあ僕ってすごいの?」
私の説明の何かがルウの琴線に触れたようでベットの上で跳ねると立ち上がった。
「すごいってもんじゃない」
ガイが呆然としたように呟いた。
「本当?父上と母上にほめられるかも!」
なるほど、両親に褒められるかもしれないから喜んだのか。
嬉しそうにベットの上でぴょんぴょんと跳ねる可愛いルウを私はしばらく眺めていた。
ルウがお腹すいたと叫びだすまであと3分。
おまけのオマケ
分裂?して数日後の会話。台詞のみ。BLネタ、下グロネタ注意。
文章反転で読めます。
「、近づくな」
「はぁ?」
「頼むから」
「ああ、今の私が女だからか」
「悪いとは思うが……」
「いいよ。ゲイに悪気はないもんね」
「おっ、俺はガイだっ!俺は女性が好きなんだぞ」
「もう君の様子から女の子のことは諦めれば」
「嫌だ。それに俺が女性を諦めた時に対象としてはルウになるとか思わないのか?」
「あはは、嫌だなぁ……その時はちょんぎるよ」
「なっ、何を?」
「ナニを」
「ヒッ」
「ウソウソ、冗談だって」
「冗談、冗談だよな」
この時の瞳はマジだったと某使用人は己の日記に書き記している。