海水浴


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女神様に海神側の使者であるアイザックを接待するようにと命じられて来たのは無人島の島だった。
アイザックが聖域で気を張って疲れ気味なのを気にしてのことだろう。接待役に命じられたのがカミュと氷河に私という見事にシベリアで共に過ごした人だけだし……ミロがかなり一緒に来たそうだったが女神の配慮のことも考えて今回は遠慮してもらった。
到着した日はかつての頃と変わらずな調子で過ごしただけだったが、そういえば今回は接待であり修行ではないということで海水浴をすることになった。
女神の人としての立場での別荘に何でか新品の水着やパーカーが置かれていたのを発見し、晴れ渡る空、潮の香りを運ぶ風。絶好の海水浴日和にテンションが高くなった私が提案したというのが事実だけどね。
無人島の砂浜には水着にパーカーを羽織った姿の私達四人の姿、敷物を敷いてその上にタオルなどの荷物を置き。
「カミュ、私は荷物を見てますね」
そう言ったのは中身年齢としては私が一番上だからなのと。
「アイザック、あの岩まで行って帰ってくるのはどちらが早いと思う?」
「俺には海はテリトリーだぞ?氷河」
表面はともかくとして内心ではテンション上がってるっぽい不適に笑い睨み合う二人の競争に巻き込まれたくないからだ。
「ここに人はいないが?」
「タオルとか風で飛んでいってしまうかもしれませんし」
「私が見ていよう。も泳ぐといい」
笑みを浮かべて親切心で言ってくれているのだろう彼に首を振り。
「いえ」
「……だが」
「カミュ、私の体力では二人についていけません」
何故だか背中合わせに無言で準備運動をはじめている二人へと視線を向ければ、続いて競争心いっぱいの弟子達に視線を向けたカミュが頷き。
「私が二人に付き合うとしよう……お前は心配性だな」
心配性と言われた意味が理解できなかったがその意味を問う前にカミュは二人の下へと歩いていってしまったので、わざわざ呼び止めることもないと思ってそのまま流すことにした。
「アイザック、氷河。その勝負、私が見とどけよう」
いや、どうして煽るのさ。そう思わず呟きたくなったがどれだけ距離があろうとも黄金聖闘士のカミュに聞こえそうなので呟きを飲み込む。
「はい!カミュ」
「見とどけて下さい」
元気に声を発した氷河とアイザックの目はキラキラしてる。
本当にカミュが絡むと無駄に元気な兄弟弟子達だ。
「二人共、無茶はしないでね」
「ああ」
「心配するな」
頷く氷河と笑みを浮かべてこちらを見たアイザック。
無茶をするなというのは彼らに対してよりも自然に対してのものだったりするけど、それは言わないでおこう。
小宇宙を高めると岩とか余裕で砕く人間なのだ。うっかりサンゴ礁を破壊とかは避けて欲しい。
彼らのパーカーを腕に預かるとギリシャ彫刻も真っ青な肉体美をさらした美青年、美少年な三人の背を見つめる。
「綺麗だなぁ」
慣れはしたが改めてみると時々こんな風に彼らが美形だと思い出す。美形で強いって天は二物を彼らに与えているよ。
問題があるとしたら聖闘士となるための修行の日々のせいで一般常識がポロッと何処かにいってるところか。
敵が神話生物のせいか世界の神話や伝承、各地への派遣のために語学の勉強とか知識がないわけではなく偏ってる。
この三人、将来的に結婚できるのだろうか?と、師や兄弟弟子達にたいして勝手に内心で心配しつつ敷物の上に座って二人の勝負の様子を眺める。
二人はいい勝負を繰り広げたがアイザックの勝ち、そして休憩無しで第二勝負がはじまったようだった。
「えっ?何でカミュも泳ぎだすの?」
一回目と同じように岩場にほぼ同時に着いた二人を確認したところでカミュが海へと入り泳ぎだし、実は人魚なのかと言いたいぐらいに速いその泳ぎは二人を抜き一着だった。
流石はカミュだとか二人は師を称えているが、何してるの?あの人って呆れが先に来たのは弟子失格かもしれない。





カミュ視点

久方ぶりの師である私や兄弟弟子だけの環境にアイザックの肩の力は程よく抜けている。
アテナからのご好意を受けることとしたが、その判断は間違っていなかったようだ。
無人島についてからは四人で共にあった頃のように修行をし、の提案で海で泳ぐこととなった。
訓練の中には水中での戦闘の仕方もあったが遊びで泳いだことはなかったので、はじめての海水浴と言えるだろう。
から四人分の水着を用意されていたと聞いたが、今回のような事態を予想されたとしたら流石はアテナということか。
「修行でなく海で泳ぐのははじめてだ」
楽しげなアイザックの姿をが微笑ましそうに見つめている。
聖域に滞在しているアイザックをずっと気にかけていたからするとその姿が嬉しいのだろう。
「折角、海で泳ぐのだから競争でもするか?」
「海闘士に海で勝負を挑むというのなら受けて立つぞ」
アイザックと氷河は泳ぎを競うようだ。競り合う者がいることで張り合いがあるのならいいことだ。
「カミュ、私は荷物を見てますね」
二人の様子を見ていると斜め下から声が聞こえてきたので視線を向ければが敷物代わりのシーツを敷きその上にタオルを置いていた。
海水浴の提案をしたのはであり、泳ぐことも楽しみにしていた様子であったのに荷物番をかってでたことにらしいと思う。
「ここに人はいないが?」
「タオルとか風で飛んでいってしまうかもしれませんし」
普段は管理する人間が居るらしいが、私達が居る間は他には誰も居ない。
荷物を見ていなくともなくなるような心配はないのだと告げるが納得せず。
「私が見ていよう。も泳ぐといい」
「いえ」
「……だが」
楽しみにしていたはずなのに自分のことを後回しにしようとするへと言葉を重ねるが困ったように笑み。
「カミュ、私の体力では二人についていけません」
その視線はアイザックと氷河へと向けられていて、先程からの競泳を心配してのことだと理解した。
「私が二人に付き合うとしよう」
聖闘士と海闘士なのだから海で溺れるような事態にはならないというのに、私が傍に居て二人を見ていられるようにするとは心配性なことだ。
「お前は心配性だな」
そう呟けば不思議そうにこちらへと視線を向けるは自分が心配性だと思ってもいないのだろう。
誰かを気にかけることを当たり前のように出来ること、それはの美徳ではあるが時には自己を優先させることも必要だ。
聖闘士としての才能を充分に秘めているだが、聖闘士となれなかったのはその優しさのせいでもあった。
「綺麗だなぁ」
海へと駆け出すアイザックと氷河の後から海へと向かう途中で聞こえたのはこの景色を称えての言葉。
共に過ごしたシベリアとは違う温かな海の姿は確かにシベリアの海とはまた違う美しさがあった。
世界の美しさを感じ、素直に言葉にすることができるを嬉しく思うのはこの世界を救うことが出来たからか。



二人の競泳が終わり、にも泳ぐようにと言った後には白のパーカーを脱ぐその下には白と水色のボーダー柄の水着、柄はよいとして何故ビキニなのかと水着を用意したはずのアテナに聞きたくなった。
あのように肌を見せるべきじゃないとパーカーを着せたくはなったが、他に水着など用意をしていないし、此処に居るのは私やアイザック達だけだ。
のことを男であったと知る人間だけであるのだから、気にするようなことではない





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