ご褒美
黒き超人の身体が空中を舞う。その大きな身体がどうしてこんなにも華麗に動けるのだろう。
その動き、その強さを持つ彼は……黒い悪魔とそう呼ばれるほどにかつては恐れられていた。
「コーホー」
特徴的な息遣いの彼の名はウォーズマン。戦う為にっと、とある正体隠した某マスクマンから手解きを受けた超人。
「……?」
1人で訓練中の彼を見ていたのだけど、私の視線が気になったのか彼が身体を動かすのを止めて此方を見ていた。
「何?」
にっこりと笑って返事をする。
「……」
困ったように彼は沈黙し、彼は練習に使用していたリングから下りて私のところへと歩いてきて、私の前で立ち止まると片膝をつき座っている私と視線を合わせた。
「子どもにする態度よ。それ」
子どもには目線を合わせてあげることが大事らしいと聞いたことがある。それが子どもに接する時の基本、人間関係からしても話している時に目を合わせるということは基本だしそういうものかもしれないとは思うものの彼が私の前で方膝をつく必要は無い気がする。
「何か間違ったか?」
私の言葉に敏感に反応して彼は困ったように私を見ている。大きな彼の身体が小さく見える。
「私の勘違いみたい」
「そうか」
私がそう答えれば彼が安心したように笑う。大型犬。
一流の超人をそんな風に言うものではないとは思うけど、彼は大型犬のような気がする。
良く言い付けを守り、番犬にもなってしまう素晴らしい犬のような。
「ねぇ、ウォーズマン」
私は彼の名を呼ぶ。
「なんだ?」
私の言葉を待つ彼。無言でじっと彼を見詰めたまま、しばらく。
「?」
「動かないでね」
彼が私の名を呼ぶとそう告げて、私は座っていた椅子から立ち上がる。
私の動きを彼は見ているけれど私の言葉通りに動かない。
「……御褒美」
ちゅっ。
ワザと音をさせて彼の額にキスをした。
少し、頬が赤くなる。
「……」
ウォーズマンの反応が無い。
彼の様子を見ようと顔を覗こうとすると素早く顔を背けられてしまう。
「動かないでって言ったでしょ」
「コー…ホー……」
観念したらしいウォーズマンの顔を覗けば照れているらしい。
その様子に私の頬は一段と赤くなり、慌てて頬を両手でおさえる。
ウォーズマン、反応可愛すぎ……私は心の中で小さく呟いた。