お店番
今日はギルドショップ『どんぐり』のお店番。
いつもガスパーが楽しそうにお店番をしている間のことを話してくれるので物は試しっとやってみることにしたんだけどね。
「自分には向いてないのかも……」
愛想が無いのかどうなのか知らないけどお客が全然来ない。
他のギルドショップには来てるのにさ、どうして来ないんだろ。
ぼんやりと過ごしていると目の前に誰かが立った気がして視線を向けるとクーンが立っていた。
「今日はが店番か?」
覗き込むようにしてクーンが私に話しかける。
「そうだよ。クーン」
クーンの言葉に頷いたものの、店番らしいことは実はまだ一回も出来てない。
役立たずなギルドメンバーという印象をクーンに持たれちゃうかな。
「商品の準備は出来てるんだよな?」
「うん」
でも、何を売ったとか言えないんだよねぇ。クーンが来たって事は売上金回収のはずなのに。
「じゃあ、一つ聞くけど……」
うぅ、売り上げあったか?
「何?」
そうじゃありませんようにと願いながらクーンの言葉を促す。
「どうして開店させないんだ?」
「へっ?」
予想していなかった言葉に私は間抜けな声をだしてしまう。
クーンをぽかんっと見ている姿もきっと間抜けなことだろう。
「……やっぱり、知らなかったのか準備できても開店させないと店は開かないんだぞ」
呆れたようにため息をつくクーンに何も言えない。
「そうなんだ」
開店してないならお客が来るわけがないじゃないか。なるほど、商品準備してるだけじゃダメ……。
「ガスパーも確かそんなことを言っていた様な気がする」
値段設定の目安とか聞いているうちにコロッと大切なそのことが抜け落ちいていたらしい。
クーンに指摘されて思い出すようでは遅すぎることこの上ない。
「開店しないとね」
お店を無事に開店させることが出来て一安心です。
「お客さんが来ない理由が愛想が無いとかじゃなくてよかった」
本当にそれが理由だったらショックだっただろうとホッと一息ついている私を見てクーンが笑っている。
そういや、クーンにも無駄足を運ばせちゃったんだ。
「売上金、回収にきたんでしょう?ごめんね」
パンッと両手を叩いて謝る。
「いいよ。別に……が店番してる光景を見れただけでも」
「何それ、似合わない?」
クーンの言葉を私は遮って尋ねる。
店番してる光景を見れただけでもって何か微妙な言い回しじゃない?
「そうじゃないさ。がこういうことにも関わってくれたことが嬉しいんだよ」
にっこりと笑い嬉しそうに言うクーンには背景の晴れた空がよく似合っていて。
「戦う以外にもこのThe Worldをには楽しいで欲しいからさ」
ほら、こんなにもかっこ良く見える。
これが計算なら計算高い男だろうと思うだろうに、クーンは意識していないからカッコイイと思うんだ。
「楽しんでるよ。此処で皆に出会えたんだからさ」
今まで出会ったすべてのPC。
これから出会うすべてのPC。
色んな出会いがあって、色んな別れがある。
「色んなThe Worldが好きだよ。私」
「そうか」
笑って私は言うとクーンは頷いた。
店番と売上金回収出来なかったギルドマスターの二人で語り合うのもThe Worldの楽しさだったりするのかもね。